ソマン

1944年にドイツで開発された神経ガス(nerve agent)で、第二世代の毒ガ
スである。 1936年にタブン、1938年にサリンが合成されたため、German
gas の頭文字をとってG 剤と呼ばれ、開発順にGA 、GB 、GD というコード
ネームがつけられた。 第一次世界大戦で製造・使用された毒ガスが第一
世代。

<概要>
ソマンはサリン、タブン、VX と同類で、神経剤に分類される。強いアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有し、吸入
半数致死量(LCt50)で表される毒性は、VX>ソマン>サリン>タブンの順に強い。無色〜茶色がかった液体で、速や
かに蒸発する。わずかに果実臭、カンフル臭がある。非常に作用が速く、吸入暴露、皮膚暴露、経口摂取によって、
全身症状を呈する。
酸または酸性蒸気と接触すると、フッ化水素を遊離する。また、加熱すると刺激性のフューム(フッ化物、リンの酸化
物)を遊離し、肺水腫を引き起こす。

二次汚染を防ぐため、患者と接する者は防護を怠ってはならない(レベルD)。臨床症状は重症の有機リン剤中毒に
準じ、治療もそれと同様に硫酸アトロピンやPAMを投与する。しかしソマンはエイジングが早いので、PAMは数分以
内に投与しなければならない。
下記の症状の右へ行くほど重症である。
縮瞳→鼻汁→気管支痙攣→分泌亢進→呼吸障害→痙攣→呼吸停止


<毒性>
吸入暴露時が特に毒性が強いが、皮膚、眼に対しても浸透し強い作用を示す。
極めて速やかにコリンエステラーゼ阻害作用が発現する。 ソマン、サリン、タブン等の神経ガスは知られている合成毒
物の中で最も毒性が強く、実験動物にはmg以下の量で致死的となる。 ソマンはVXより毒性は低いが、サリン、タブン
より毒性は強く、1滴で致死的 。

(致死量)
吸入ヒト半数致死量(LCt50):35 〜50mg-分/m(3)、 50mg-分/m(3)
皮膚浸透ヒト推定半数致死量(LD50):(液体)100mg/人 、 350mg/人 
皮膚浸透ヒト推定致死量:(ガス)11000mg-分/m(3)
(中毒量)
吸入ヒト最小中毒量:(ガス)1x10(-5)mg-分/m(3)
半数不能量:タブン(約300mg-分/m(3))とサリン(75mg-分/m(3))の範囲内 

<中毒症状>
短時間暴露で致死作用がある。暴露濃度により1-10分で死亡することもあるが、1-2時間遅れることもある 。 神経ガ
スを野外で実感できるような濃度で吸入すると、直ちに無能力化する。
(無能力化とは死に至らなくても人間の能力を長時間無効にすること。 ソマン中毒は速やかにエイジングを起こし、コリ
ンエステラーゼの賦活が遅く、中枢神経症状やその他コリン作用以外の直接作用もある。 ソマンによるヒト中毒例は
報告されていない。 以下のような有機リン剤と同様の中毒症状が出現すると考えられる。 

ムスカリン様症状
縮瞳、気管分泌物の増加、鼻汁、流涙、尿失禁、腹痛、嘔吐徐 脈、気管支痙攣、流涎、発汗、下痢、血圧低下
ニ コチン様症状
筋肉の痙攣・硬直・循環虚脱・麻痺頻脈、血圧上昇、攣縮、呼吸麻痺
中枢神経症状
不安、興奮、不眠、悪夢等中枢神経系抑制、混乱、せん妄、頭痛、昏睡、痙攣、精神病

(蒸気暴露時)
低濃度の蒸気暴露で、数秒〜数分の間に、縮瞳、視覚障害、鼻汁過多、各種の程度の呼吸困難を来す。高濃度の
蒸気では1〜2分で意識を消失し、その後、痙攣、弛緩性麻痺、無呼吸を来す。縮瞳、流涙、流涎、鼻汁や気道内分
泌物の過剰もあり、発汗、筋線維束性攣縮、尿失禁などがおこる。 
(皮膚暴露時)
少量の場合、症状発現までに通常数時間以上を要する。暴露部位のみ、筋線維束性攣縮、発汗を認めることがあ
る。多量では次いで嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状、全身発汗、倦怠感がみられることがある。極めて大量ま
たは致死量に近い量では、10〜30分の無症状期のあとに突然、意識消失、痙攣、弛緩性麻痺、無呼吸を起こす。






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